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(里美のくそったれが!!)
俺はアクセルを踏み込んだ。
(休みをあわせて、こうして逢いに向かってるのに、用事が入った、ってどういう事だよ!)
長距離恋愛中の里美と、3ヶ月ぶりに逢えると思って喜んで居た俺の怒りはピークに達していた。
(浮気してるに違いない!行って首根っこひっつかまえてやる。)
メーターが振り切り、車体が揺れた。
俺は車と車の間を縫い、高速を飛ばした。
(高速なんだからちんたら走ってんじゃねぇよっ!)
俺は遅い車に容赦なくパッシングし、クラクションを鳴らした。
前を走る車が俺の為に次々と道を空ける。俺は少し気が紛れたのと同時に、その優越感と快感にひたった。
そんな俺の目の前に、トラックが割り込んだ。俺は慌ててブレーキを踏んだ。
(ブレーキが効かない?!)
俺はハンドルを切り走行斜線に移ったがそこにはもう一台のトラックが…
(トラックの壁だ…)
俺は目を閉じた。
俺は最近悪夢にうなされ事が多い。それも決まって事故る夢。そしてそのどれもが直後で目が覚める。
(勘弁して欲しいよな。)
俺はベッドの上でそう思った。
俺の身体は交通事故で動かない。
痛み止めのお陰で四六時中睡魔に襲われる。悪夢を見ても、動く事も叫ぶ事も出来ない。
(なのに…)
俺は再び襲う睡魔に抗がう事が出来なかった。
(勘弁して欲しいよな…)俺は再び眠りに落ちた。
俺は激しい痛みに目を覚ました。
痛いのは当然だった。潰れた車体に下半身が挟まれている。
(寝ちゃったのか…)
俺は家で待つ家族を思った。
(保険金下りるのかなぁ?)
次の瞬間、激しい衝撃と痛みに俺は意識を飛ばした。タンクのガソリンに引火し、俺の身体は吹き飛んでいた。
突然音量が大きくなったラジオに、俺はハッとした。
(寝てたのか?)
今日はピストンで土砂を運ばなければならず、今また現場に戻る途中だった。
「東名高速道路下り線、御殿場付近は、タンクローリーを含む六台の事故の為、現在通行止めになっています…」
ラジオからそんな声が聞こえてきた。
(俺も気を付けないと。)
窓から一瞬冷たい風が入り、俺は身体を震わせた。
(何でラジオのボリュームが上がったんだろう?)
俺はラジオのボリュームを下げながら思った。
その瞬間、再び睡魔が…
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