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PM09:00・大阪ミナミ……
夜のミナミの街を、当てもなくさ迷う2人の男の姿があった。
「どっかにええオ○コ落ちてへんかな。なぁ、ナオ君。」
極度に目の細い中肉中背の男が、辺りを見回しながら言った。
彼の名は小林。みんなからは「コバ」と呼ばれている。
彼は当時20歳で、無職である。
いつも眉間にシワを寄せながら、「社会の歯車に成り下がりたくない」と言っている。
「けっこうおるけど、この時間帯のナンパはきついんちゃう?」
やや長身のスラッとした男が、すれ違う女の子達を目で追いながら答えた。
このナオ君と呼ばれている男も、コバと同じく20歳。
現在大学を休学中で、ほぼニートのようなものである。
ナオは元売れっ子ホストだったようで、なかなかの男前である。
ちなみに、コバもああ見えて元ホストである。
ナオがホストのナンバーワンになれる器だとしたら、コバはガストのハンバーグファンになるのが限界であると思われる。
その時、コバが何かを発見したようである。
コバの細い目がグワっと開いた。
「ナオ君!apの前に退屈とビッチさを必死にアピールしとる、二人組のオ○コおるで!」
コバが目を光らせながら言った。
「お~。あの座ってる子らやろ?あんま気が進まんけど、暇やし声かけてみよか。」
「俺ここで見といたるから行ってきーや。」
「え?コバまた行かへんの?
まぁ俺が行ってくるわ!」
コバは、ナンパの際に絶対自分から声をかけようとしない。
シャイなのか何なのか、理由はよくわからない。
コバは、いつもナンパに手応えがあり、場が暖まった頃合いを見計らって乱入してくる。
そんなゲスいコバの事を、みんなはこう呼んでいた。
「キツネの眼をしたハイエナ」と……
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