3307人が本棚に入れています
本棚に追加
コバは、電柱の陰に忍者のように潜みながら、ナンパの様子をじっと見守っている。
ナオが2人組の女の子に声をかけた。
ナオが男前だということも手伝い、女の子達の反応はわりかし良い様子である。
ナオのナンパ成功率は、イチローの打率並みに高い。
ナオがイチローだとすれば、コバはベンチで睨みを効かす星野監督……
あるいは、甲子園のアルプススタンドから野次を飛ばす阪神ファンである。
ナオは顔が良いだけでなく、喋りも上手い。
あっという間に女の子達と打ち解けたようだ。
どうやら、ナオと女の子達はアドレス交換をしようとしている様子である。
ナオがジーンズのポケットから携帯電話を取り出した瞬間を、コバは見逃さなかった。
「俺も混ぜてや!」
突如、コバが折りたたみ式の携帯電話とまぶたを、精一杯開きながら乱入してきた。
コバは、ここ一番という時には必ず目をグワっと見開く……
写真やプリクラを撮る時……
ホスト時代の写真撮影も例外では無かったようだ。
コバの過去の写真を見てみると、二種類しか無い。
目を不自然なまでにパッチリ見開いているもの。
もしくは、シャッタータイミングをミスって半目になっている、非常にグロテスクなものかのどちらかである。
目をパッチリ見開いたコバが、リズミカルにこちらへ近付いてくる……
コバに気付いた女の子達の表情が、一気に不安の色へと変化していった……
コバは気付いていない……
目を見開く際にまぶたに力を込め過ぎたあまり、鼻の穴まで大きく開いてしまっている事を……
みんなは、このコバの特異な現象の事を「第三の目の開眼」と呼んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!