ミナミのリアルアンダーグラウンド

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コバは、電柱の陰に忍者のように潜みながら、ナンパの様子をじっと見守っている。 ナオが2人組の女の子に声をかけた。 ナオが男前だということも手伝い、女の子達の反応はわりかし良い様子である。 ナオのナンパ成功率は、イチローの打率並みに高い。 ナオがイチローだとすれば、コバはベンチで睨みを効かす星野監督…… あるいは、甲子園のアルプススタンドから野次を飛ばす阪神ファンである。 ナオは顔が良いだけでなく、喋りも上手い。 あっという間に女の子達と打ち解けたようだ。 どうやら、ナオと女の子達はアドレス交換をしようとしている様子である。 ナオがジーンズのポケットから携帯電話を取り出した瞬間を、コバは見逃さなかった。 「俺も混ぜてや!」 突如、コバが折りたたみ式の携帯電話とまぶたを、精一杯開きながら乱入してきた。 コバは、ここ一番という時には必ず目をグワっと見開く…… 写真やプリクラを撮る時…… ホスト時代の写真撮影も例外では無かったようだ。 コバの過去の写真を見てみると、二種類しか無い。 目を不自然なまでにパッチリ見開いているもの。 もしくは、シャッタータイミングをミスって半目になっている、非常にグロテスクなものかのどちらかである。 目をパッチリ見開いたコバが、リズミカルにこちらへ近付いてくる…… コバに気付いた女の子達の表情が、一気に不安の色へと変化していった…… コバは気付いていない…… 目を見開く際にまぶたに力を込め過ぎたあまり、鼻の穴まで大きく開いてしまっている事を…… みんなは、このコバの特異な現象の事を「第三の目の開眼」と呼んでいた。
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