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「てかさぁ、今からダーツバーでも行かへん?」
コバが齎したマイナスの空気を払拭するかのように、ナオが声をあげた。
ナオは、座り込む女の子達の手を取り、ヒョイと立ち上がらせた。
女の子達もダーツバーに乗り気なようで、話が上手くまとまりかけたその時であった……
「えー、おれダーツバー微妙やわ!」
コバが怠そうな顔をしながら言った。
「じゃあ、コバはどこに行きたいん?」
ナオが尋ねた。
「うーん、今日は朝から仕事やって疲れてるから、ゆっくり出来る所がええな……」
コバはニートにも関わらず、仕事に精を出す勤勉な社会人アピールをし始めた。
ナオは瞬時に判断した。
コバの言う「ゆっくり出来る場所」は、ラブホを指していると。
「コバ、ゆっくり出来る場所って?」
ナオはあえて気付いていないふりをしている。
「まぁ、ゆっくり出来る場所やったら何処でもええわ。
ナオ君決めて。」
コバが、ナオにアイコンタクトのようなものを送りながら言った。
コバの目は極度に細い為、アイコンタクトしても解りにくい……
コバがナオに送る視線が、確実に「ラブホ行こって言えや」と威圧している。
「じゃあ、カラオ……」
「んん"ーー!!!」
ナオが「カラオケ」と口にしようとした瞬間、コバが大きい咳払いをしてかき消した。
ナオは「無理や」とコバに視線を送り返した。
しかし、コバはサングラスを外したインテリヤクザのような目つきでナオを威圧している……
「なぁ、やっぱラブホ行こや……」
コバからの重圧に屈したナオが、肩を落としながら呟いた。
「は?ウチらそんな軽い女ちゃうし!」
女の子達は、ナオを睨みつけてから足早に去っていった。
「別にあんなブサイクどうでもええしな!」
コバが笑いながら言った。
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