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コウと呼ばれている男の働く店に辿り着いた、コバとナオ……
「いらっしゃいませっ!
あっ!コバさんにナオ君!」
坊主頭のボーイが、おしぼりを広げながら2人を出迎えた。
「久しぶり!コウおる?」
コバが、おしぼりで首やら脇やらを拭きながら尋ねた。
「コウ君なら、今キャッチに出てますっ!」
「そうか。じゃあコウ来るまで待たせて貰うわ。
あ、俺まいちゃん付けてや。」
コバはそう言って、脇汗を拭った後のおしぼりをボーイに手渡し、店の奥にあるボックス席に腰を下ろした。
10分程経った時、1人のスーツ姿の男が店内に姿を現した。
「おいコラ!ハゲ!
おまえら金払わんくせに店くんなや!まじ帰れ!」
背が高く、短髪で色黒のワイルドな男が、コバを睨みつけながら怒鳴った。
どうやら、彼がコバ達が「コウ」と呼んでいる男のようだ。
コウは、当時コバやナオより一つ下の19歳。
安キャバの店長をしている。
コウは、女の子に席を外すように指示した。
「しかも、なにジョッキで生飲んどんねん!
しばくぞコバ!」
コウは卓上のジョッキを見ながら怒りをあらわにした。
コウの店では、生ビールは基本、グラスでしか提供していない。
「ビールちゃうわ!中身はデカビタじゃボケ!」
コバが吠えた。
「コウ、ごめんな……
今度○○女子大とコンパ、セッティングしたるから……」
ナオが申し訳無さそうな顔をしながら言った。
「……わかった。待機室にやったら、ずっとおらしたるわ。
おい!こいつらに何言われてもミネ(水)以外与えたらあかんぞ!」
コウは、ボーイに厳しく忠告してから店を出て行った。
「ケチ!!金輪際この店のトイレでウンコしても流さんからな!」
コバが再び吠えた。
腑に落ちない様子のコバは、待機室に向かう途中にすれ違った女の子の耳元で囁いた。
「ここの店長、クローズ後にロッカーの中のドレスやらタイツやらクンクンしとるから気ぃ付けや……」
もちろん、根も葉もないコバの作り話である。
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