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「中学一の夏休みに、弟を連れて公園に行ったんだよ…。道路に出たボールを取りに行こうとした瞬間に…トラックが来て…。
それで…それで…」
弟が結衣を突き飛ばして、身代わりになった
ということか…。
「でも、寂しくないよ…。友達もいるし、弟と一緒に寝ていた思い出の二段ベットもあるし…。」
結衣は必死に涙を堪えていた。
「でもね…もっと私が気を付けていれば…弟は…康介は…」
こうすけ…
それが弟の名前か…
なんとか結衣を慰めようと思って僕は必死に言葉を探して、 話した。
『堀坂さんのせいじゃないよ…。誰のせいでもないよ。きっと…こうすけくんは…堀坂さんが泣いている姿は…望んでいないと思うよ…。』
もうなんでもいいから慰める言葉をかけた。
すると、結衣は溢れていた涙が止まり、 いつもの笑顔に戻った。
「うん…。そうだね…。康介が心配するよね…。ありがとう、賢くん。」
僕は少しホッとした。
女子に興味ない
と言っても、泣いている人が笑顔になることは嬉しいことだ。
さてと
もう日が落ちているし
『じゃあ…僕は帰るね…。君の両親に悪いし…。』
と言ってドアを開けようとした時
後ろから結衣に抱きしめられた
「いかないで………お願い………いかないで………お願いだから………」
背中にあたる胸の感触
優しく僕を包んでいる腕
僕はなにが起きているか
さっぱりわからなかった
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