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灯りがだんだん消えていく商店街。
ここにも、今、店の灯りが消えそうになっていた。
男が、店の前に来てシャッターを下ろす。
最後のシャッターに手をかけた時、何か気配を感じ振り返る。
「うわっ!?」
美雪が貞子みたいに、ぼーっと突っ立っていた。
前に一度訪れた藤村の本屋だった。
「……何してんの?」
驚いたまま、藤村は美雪に聞いてきた。
「……全部、先生の所為だなって思って……」
「何が…?」
とぼけて、白を切る藤村に美雪は苛立ちを感じた。
「…私は…普通の高校生になりたいだけなのに…全部先生がめちゃくちゃにしてるじゃない!」
「めちゃくちゃにした覚えはない。…合コン行ったんだろ?彼氏ができていいじゃねぇか」
「……」
西澤に掴まれた手首を、もう一つの手で隠した。
その様子を藤村は見逃さなかった。
美雪の服を掴み、本屋の中に入れ、シャッターを一気に下ろした。
シャッターを背中に、藤村が体を挟み込んできた。
「…お前…そんな事言う為にここまで来たのか…?」
藤村の視線から逃れられず、美雪は何も言えなくなる。
「由樹(ユキ)?どうした?」
奥から、一人老人が出てきた。
第三者がいるとは思わなくて、びっくりしていると、藤村が体で美雪を隠した。
「爺ちゃん、何でもないから先に寝てて」
藤村がそう言うと、その老人はそうかと言って、また奥の部屋に消えていった。
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