日輪の申し子、西海の鬼

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日の光を浴びながら、少女は一人、目を閉じていた 「……日輪よ…」 少女の名は毛利元就 日輪の申し子と呼ばれる武将である 冷たい目や冷酷な言動から女王と影で呼ばれ、兵たちに慕われている(?) そんな元就は日輪と甘味をこよなく愛していた 「…そろそろ真田が出発した頃か」 同じ甘味好き仲間であり、かわいらしい真田幸村嬢は元就のお気に入りでもあった その幸村は今頃、甲斐を出ただろうかと考えた元就は知らぬうちに笑みが浮かんでいた だが、そんな幸せが消えるのはすぐだった 「も、元就様!!」 「…なんだ、騒々しい」 一人の臣下が慌ててやってきた そのことに顔をしかめながら、元就は振り返った 「大変ですっ!!長曽我部が来ま 「追い返せ」 臣下が言い終えるのも待たずに元就は言った 「ですが 「追い返せ。あのアホの顔を何故我が見なければならない?」 臣下の煮え切らない態度にイラッときた元就はそう言い放った しかし、その目に飛び込んだのは見慣れた銀髪の女だった 「アタシをアホ呼ばわりするのかよ、元就?」 「アホをアホと呼んで何が悪いのだ?」 「アホじゃない!!」 銀髪の女 名を長曽我部元親という武将だ 瀬戸内の海、全てを治める四国の武将である彼女は部下に姉貴と慕われている その容姿や気質から西海の鬼とも呼ばれる 一応、元就の恋人らしい 「おい、貴様。朝餉の用意をしろ」 元親の存在をまるっきり無視した元就は女中に言う すると、元親はフフンと笑った 「感謝しろよ、元就。今日の朝飯はアタシが今朝釣った魚が出 「我は魚を食わん」 「なんでだよっ!?魚嫌いじゃないってこの前言ってたじゃん!!!!」 「朝からお前のアホ面を眺めたというのに大量に朝餉を食うつもりはない」 バッサリと言い切った元就はスタスタと歩き、部屋を出た 元親も落ち込みつつ、元就の後を追いかける 「なぁ、元就」 「……」 「元就~」 「…………」 「………も、元就ぃ~…」 「……………」 あくまでも無視を続ける元就に元親は自分が半泣きになりそうなことを自覚していた つい数年前までは姫若子と呼ばれていた元親は案外涙もろいのだ
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