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「じゃあ、今度こそ」
「ん、いってらっしゃい」
そう言って開けっ放しになっていた玄関から外に出る。
……ん? 開けっ放し?
ドアを後ろ手に急いで閉めるが、最早そんなことに意味はない。
「あ、ちゅうしなかったね」
「しなかったね~」
「男がヘタレなのよ」
「そっとしておいてあげなさい。あの年頃には色々あるのよ」
小学生女子の集団と若奥様に見られていました。死にたい。
……もういいや。早く学校に行こう。
外に出てしまえば晴れていながらも低い気温が容赦なく体を攻撃してくる。
マフラーを口元まで引き上げ、コートのポケットに手を突っ込み、背後から聞こえてきた「ヘタレ~」の声を完全に無視して歩き出した。
そうして5分も歩かないうちに
「あ、ユキ。おはよう」
そう声を掛けられる。
声の方に視線を移せば、少し長い黒髪に低めの身長も相まって余計に幼く見える相貌、そして俺と同じようにコートを着ている、秋月 彰人(アキヅキ アキト)が目に入った。
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