1027人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、だ。アキから本日がバレンタインデーと聞き、すでに3限目に入ろうとしているのだ
が」
そう、すでにHR、1限目、2限目が終わり今は休み時間に突入している。
教室の中はバレンタイン独特のそわそわした空気に支配されていた。
男子はちらちらと視線をさまよわせ、女子は数人で集まりひそひそと笑いながら話をしている。
まあ、皆一様にこの独特の空気を楽しんでいる感じだ。中には我関せず、という者もいるにはいる。
そんな中俺は前の席に座る彰人に話しかけていた。
「いや、そんな深刻そうに言われても」
俺の言葉に彰人は、ははっと軽く笑いながら教室内を見回していた。
視線を追えばちょうどチョコを渡している場面が目に入る。
まあ、こんな目立つところで渡すって事は義理チョコだろうけど。
「いや、深刻な問題なんだよ」
「チョコを貰うことのどこが深刻な問題なのさ?」
大げさだなぁ、と彰人は再び笑う。
「いいかね、彰人君。これは君自身にも言えることなんだぞ?よく聞きたまえ」
「はいはい」
まるで教師のようなしゃべり方をし始めた俺に素直に彰人が付き合ってくれる。
こいつのように常識的でツッコミの必要性が感じられない奴の前だと、俺はしばしばボケに回ることがある。まさに今がその状態だ。
最初のコメントを投稿しよう!