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「り、理由の2つ目って」
「ああ、その通りだ。姉さんがチョコを作りたがる」
俺はげんなりと呟く。
俺の姉である雪代刹那は料理が下手だ。……いや、これじゃ足りないな。
料理が壊滅的に下手だ!……これも違うな。まだ食えそうな感じがしてしまう。
俺の姉は料理を化学兵器に練成できる!!……これだな。一番しっくり来る。
冗談のようだが紛れも無い事実。真実は一つではないが、事実は一つなのだ。
実際刹那姉さんもこの高校に通っていて、選択の授業で家庭を取ったそうだ。
そして調理実習。最初に味見をした先生が犠牲になった。
そのことは今でも学校の伝説だとか。
……できれば一生耳にしたくない伝説だったなぁ。
「アキも姉さんの料理の威力は知っているだろ?」
俺は嫌な伝説を思い出したのを払拭するため彰人に話を振る。
「…………」
おや?返事が無い?
あ~……もしかしてストレートに感想を言うべきか迷っているのだろうか?
さすが常識人。どこかのアホ部長に見習わせたいくらいだ。
「アキ。率直に言ってくれて―――」
俺はなんだか穏やかな気分になって彰人に視線を向けたが
「…………!!……っ!!」
そこには怯えた表情で震える小動物がいるだけだった。
どうやら我が姉の料理は一人の人間に巨大で深すぎるトラウマを作ってしまったらしい。
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