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「大丈夫?」
あわてて駆け付けた香奈が俺の顔を覗き込み、雅人は俺をかばうように前へたった。
「あぁ」
香奈に少し支えてもらいながら立つ。
「会長、紘に何するんですか?」
「紘?……ああ、こいつか」
「名前も知らないのに手を出すんですか…?」
「雅人」
なんかヤバくなりそうだったので肩に手をおいて止めた。
「紘……」
心配そうに見る雅人に微笑むことで大丈夫だと伝えて菅原と対峙する。
「おい…」
見た目オタクから出た低い声に菅原は怪訝そうな顔をした。
「何だよ?」
「あんたさぁ……そんなんじゃ本当に欲しいものが手に入らなくなるぜ?」
「……っ」
ん?ちょっと辛そうな顔になったような…?
「もしかして、経験あり?」
「お前には関係ないだろ」
「あんたは護りたいものも護れなくなる。一番大切なものを失う」
あれ?
俺……何言ってるんだ?
「お前に大切なものを作る資格はない!!」
「うるせぇ!」
「お前みたいな……お前みたいなやつ、大ッ嫌いだ!!!」
そう言って俺は走り出した。
おかしいな…?
一発殴って……それが無理なら怒鳴るだけでもいいと思ってたのに…。
ハハッ…これじゃ八つ当たりだな。
あの言葉は俺への言葉だ。
……俺自身への戒めの言葉だったんだ。
あの日の俺への……。
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