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「な、何でお前がここに…?」
「会いたかった!!」
そういって俺に抱きついてきた。
俺、恨まれてるんじゃ…?
でも、久しぶりに会う竜司は以前と全く変わらずに温かかった。
竜司は真っ黒な綺麗な髪と瞳をしている。
俺の銀色とよく比べられていたな……。
竜司は背も高いし、顔立ちもよく、昔から女子にも男子にかなり人気だった。
「何で紘が寮の中庭にいるんだ?ここは関係者以外立ち入り禁止だぜ?」
「あ、えっと……、それより、よく俺だってわかったな?」
いつもの銀色の髪と瞳なら目立つしわかりやすいだろうが、今は黒なんだ。
いくら仲が良いっていってもあり得ないだろ。
「俺はお前を間違えないよ」
顔をまっすぐ見つめられそう言われて俺は嬉しいと同時にズキン、と心が痛んだ。
俺は……………こいつを裏切ったんだ。
「本当に心配した」
「ちょ……離して、竜司」
「あ、あぁ。ごめん」
やっと離れた竜司と改めて向かい合った。
「………」
予想外だった。
まさか、竜司までこの学校にいるなんて……。
これ以上母さんにも迷惑はかけられないから転校もするわけには行かない。
「……なぁ、紘」
「!!」
向けられた視線がとても真っ直ぐで………真っ直ぐすぎて俺には眩しすぎた。
そして、俺には竜司が発するであろう言葉がわかってしまった。
「何で…いなくなっちゃったんだ?」
やっぱり……。
そう思ってはいるけど、俺にその疑問に答えることはできなかった。
「そ、それは……」
「……あの日、何があったんだよ!?」
「……っ!ごめん!!」
「おいっ!?」
これ以上、竜司と話すことが辛くて俺は………逃げてしまった。
嫌なことがあると逃げるくせでもあるのか…?
俺は……弱虫だから。
「紘……」
俺がいなくなった中庭で1人残っていた竜司は軽くため息をついた。
瞳は少し悲しそうに見えたがある物を拾い、歩きだした時には確かな光が宿っていた。
「やっと……見つけた」
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