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「紘っ!!」
俺を見るなり香奈が抱きついてきた。
少し呼吸も乱れてるし……探してくれたのかな?
思い上がりかもしれないけどさ。
でも、俺は寝てたからどのくらい時間がたったのかわからないけど…少なくとも30分くらいはたっているはずだ。
「大丈夫だったか?」
心配そうに雅人が俺の顔を覗き込む。
やっぱり探してくれたのかな?
もしそうなら………すごくうれしい。
「ありがとう。大丈夫だからさ……」
「あれ……?紘、メガネは?」
「あ…」
言われて目のあたりを触ってみた手は俺の顔にしかたたらなかった。
考えなくてもわかる。
中庭だ…。
「メガネなくても見えるの?」
まだ抱きついていた香奈は顔を上げて俺を見てなぜか顔を赤くした。
「メガネッ!!探しに行こう!…ね?」
「え、あ…うん」
あれは伊達だからなくても大丈夫だけど、竜司以外にバレるわけにはいかないので探すことにした。
「確かに探したほうがいいな。どこかに置いたりした?」
俺の顔をまじまじと見ながらそんなことを言う雅人に首を傾げた。
「マジで無自覚かよ……。んで、心当たりは?」
「…中庭」
そう言うと、2人とも目を丸くして驚いていた。
何か変なこと言ったかな?
「どうかした?」
「中庭はある人の専用の場所って暗黙の了解があるんだよ」
「ふぅん」
「近づくと親衛隊から嫌がらせされるから気をつけろよ?」
「…?お、おう」
親衛隊という聞き慣れない単語を不思議に思いながら中庭へ向かった。
「あっれぇ?ないよぉ」
中庭から聞こえたのは不思議そうな香奈の声だ。
竜司はすでにいなく、ほっと安心したため息をつく。
が、俺が寝ていたベンチにもその近くにもメガネはない。
「本当にここ?」
「ここ以外来てないし…」
「じゃあ!誰かが見つけて持っていったのかもねっ!」
「マジ…?」
確かにそれしか可能性がないが、今ここに誰もいないことからわかるように人がこないのだろう。
そこにたまたま来てたまたまメガネを見つけて持っていく人物なんて…1人しか心当たりがない。
俺は心の中で舌打ちをした。
「紘、メガネなくても大丈夫か?」
「…たぶん」
「誰が持っていっちゃったんだろうねぇ」
「そうだな」
真剣に悩んでいる2人には申し訳ないが、また竜司に会うことは嫌だったので、竜司のことは伏せておいた。
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