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「メガネないと見えない?」
「あ、大丈夫。そこまで悪いわけじゃないから」
ていうか、いいほうに入るだろう。
だから、メガネは必要ないけど……バレるわけにはいかないし。
「そっかぁ!!それなら良かった!」
屈託のない笑顔みせている香奈はいつも楽しそうだ。
「でも、危ないだろ…」
「むぅ……。そうだったねぇ」
「危ないって何が?」
「いい加減に気づけ…!」
じとっとした視線を向けられたが、何のことか全くわからない。
「ハァ……。メガネは予備ないのか?」
「……あるかも」
母さんが準備してくれた鬘やカラコンは3個ずつくらいあった。
もしかしたら、メガネもそのくらいあるかもしれない。
「そっかぁ。それならよかったよねっ!」
「もしないなら俺の貸すよ」
「ん?雅人もメガネ?」
「たまに、だよ。授業中とか時々……。あんまり度は強くないけど」
「いや、悪いよ…」
「俺がそうしたいの」
「…?そう、なのか?」
嬉しそう笑っている雅人を見ると罪悪感もなくなるし、度があまり強くないのはむしろ大歓迎だ。
でも、雅人は本当にいいのか?
「そんな顔するな。俺がいいって言ってるんだから…な?」
首を傾げる雅人にしぶしぶうなずいた。
部屋に予備があることを祈ろう。
「ほら、親衛隊に気づかれるから行くぞ」
「はぁい!」
「う、うん!!」
1人で先に行ってしまった雅人を香奈と2人で少し走りながら追いかけた。
「紘……。さっきのこと気にするなよ」
「さっき……?あぁ、食堂でのこと?」
「あぁ」
「俺も悪かったし…」
そう言うと雅人も香奈も驚いたように目を見開いた。
「ど、どうかした…?」
「紘は!!……紘は悪くないよぉ?」
「そうだ。お前は悪くない。悪いのはあいつだろ?」
「ちょっと言い過ぎたかなぁ……なんて思ってたりするんだけど」
「ハァ……。お前は優しすぎるんだ!普通は怒るだろ?」
「そうなのか」
「納得するとこじゃないでしょ!?」
めずらしく笑っていない香奈に怒られてしまった。
何でだろう?
あれに関しては俺の八つ当たりだったし…。
「……まぁ、いいさ。部屋に戻るぞ」
「いいのぉ?」
香奈はまだ不満があるようだが、雅人が何も言わないのを見てため息をついた。
なんか、力関係がはっきり見えてきたな……。
そんなことを考えていると寮の部屋についた。
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