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「俺がお前の部屋に入れたのは俺がここの風紀委員長だからだ」
「…?」
竜司の言葉に俺は首を傾げた。
いくら風紀委員長でも勝手に部屋に入れるわけがないと思ったからだ。
「ここは特別」
「…特別?」
「強姦とか日常茶飯事なんだ」
「……は?」
俺の口から間抜けな声が出てしまった。
でも、ここは男子校で、男ばかりだからそういうこととは無縁だと思っていたから仕方ないだろう。
「男子校だからありえない…って思っただろ」
「……うん」
「残念だけどそれだけじゃ発情期真っ盛りな男をおさえられないんだよ」
「……」
「それを取り締まるために俺のカードキーはどの部屋でも入れる。お前は本名がわかってるから俺の権力でどの部屋か調べたんだ」
相も変わらず輝く笑顔を見せながら言う竜司はカルチャーショックを受けている俺に「それより…」と、話しかける。
「さっきは何で逃げたんだ?」
持っていたティーカップをテーブルに置いて立ち上がった。
「……言いたくなかったから」
「あの日のこと?」
「…っ!」
ビクリ、と反応してしまった。
竜司にはそれだけで十分に伝わってしまう。
白虎の中で唯一俺の本名を知る……一番親しかったやつだ。
「やっぱり」
「殴りたいなら気が済むまで殴れよ」
俺は裏切ったんだ。
やっぱり覚悟しなきゃいけないんだよな…。
「は?」
予想に反して聞こえたのは俺が予想していたものとは正反対の竜司の声だった。
「恨んでるんだろ?急にいなくなって」
「恨んでないよ」
「嘘だっ!!」
それだけのことをしたという自覚はあるんだ。
「恨んでない。ただ……」
一歩俺に近づく。
反射的に俺は一歩下がる。
その繰り返しで俺は壁まで追い詰められた。
やっぱり殴られる……!
そう思いギュッと目を閉じると感じたのは竜司の匂いと温かさだった。
「りゅ…じ……?」
俺は抵抗をする暇もなく竜司に抱きしめられていた。
壊れ物でも扱うように……。
優しく……そっと………。
「…心配した……!!」
「…っ」
聞こえた竜司の声は何も変わらない温かさがあって……。それが逆につらくて、嫌でもわかってしまう。
変わったのは俺だということが……。
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