-2007年 秋-

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 「ちょっと手足触るよ」  一声かけた後。  私の両の手足に器具が取り付けられた。 「……っ」  冷たく硬い金属の感触が肌に伝わる。  「服、上げるよ」  彼は、私の既にはだけた上着をさらに広げ、インナーのキャミソールをたくしあげた。  あらかじめホックを外していた下着ごと。  彼の指先が肌に触れ、身体のラインをなぞるように、動く。 「………」  私はただ静かに、それに任せていた。  「いくつか器具を胸元に付けるから。少し冷たいのが触るよ」 「っ………」  言葉と共に、胸に冷たい感触が触る。  私はその違和感に、思わず目を細めた。  「大丈夫?」  その柔らかな笑顔を少し心配そうに曇らせて、彼は私の顔を覗き込んだ。  「…は…い」  私は落ち着くよう、意識して呼吸を深くしながら、静かに頷いた。  この時、私には従う以外は出来なかったのだ。  そういう、状況だった。  私が頷いたのを見て、男の心配の色が和らぐ。 「もう少し同じのを付けていくから」  言葉通り、胸から脇にかけて、複数取り付けられていく器具。  1つ1つ増えていく感触をこらえるため、私は目を瞑って。  ただ、呼吸を乱さない事だけを意識していた。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加