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一つ疑問を感じ始めれば、次々と沸き上がってくる。
桂の言葉を疑う訳ではない。桂は戯言を多々言うが決して嘘は言わない。雛乃の容態は紛れもない事実なのだろう。
だが、何かが引っ掛かる。
「ねぇ、まだ言うべき事があるんじゃないの?」
桂には自分には言えない思惑があるのではないか。そう感じた吉田は、鋭い視線で桂を見据えた。
桂は湯呑みを置き、それを真正面から受け止める。
「何がだい? 話すべき事は全て話したよ」
「ふぅん? 僕は疑問が多々あるんだけど。桂さん、雛を苦しめるような言葉を使っていないだろうね」
吉田の指摘に桂は目を微かに細めた。
「……何故、そんな事を思ったんだい?」
「目的の為なら手段を選ばない、それが桂さんの遣り方だ。薬を渡す為だけに島原に乗り込んだとは思えない」
吉田は昔から勘が良く働く。それが雛乃に関するとなると動物並に鋭い。
下手に誤魔化せば余計に疑われてしまうだろう。かと言って素直に話せば、吉田の機嫌は更に悪くなる。
さて、どうするべきか。
桂が腕を組み、軽く思案しようとした時だった。
「邪魔するぞ」
何の前触れも無く、一琉が天井裏から降りて来た。
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