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「おい、吉田! 何しやが……んだ……」
一琉は言い掛けて顔色を変えた。自分が犯した事の重大さに気付いたからである。
「やぁ、一琉。雛は八木邸に行ったんだね。……聞いていた話とまるで違うんだけど?」
笑顔で自分を見上げる吉田を直視出来ない。笑顔なのに目が笑っておらず、殺気ばかりが一琉に届く。
ああ、これはどう弁解するべきなのだろうか。
一琉は極度の恐怖から冷や汗をダラダラとかき始めている。
一琉は八木邸に雛乃が留まるだろうと推測し、桂と色々と画策をしていた。何があっても対処出来るよう忍を多数配備し、細部にまで監視の目を行き届かせている。
しかし、これは桂の独断で下りた話であって吉田には何も話していない。吉田にしてみれば寝耳に水の話だろう。
吉田は当初から、雛乃の精神面を考慮し、安全にかつ“無傷”で保護し、暗殺場には絶対に近付けないようにと主張し続けていた。
芹沢らの死が雛乃に、多大な影響を及ぼす事が分かっていたからである。
「よ、吉田。あのな? これには、深ーい訳があってだな……」
「へぇ、どんな訳? 雛を暗殺場に平然と送れる心情を是非とも聞かせてよ」
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