間章:雨上がりの空

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「藤森が一体何の用ですか」 「それがさぁ……」 殺気混じりの視線を向けてくる沖田に藤堂は危険を感じたようで、数歩その場から下がる。 「ひ、雛乃を保護してるって言ってきたんだ。保護した際、世話になっている浪士組の話を雛乃から聞いて、事情を説明しに来たらしいけど……」 藤堂の表情は戸惑いが滲んでいた。納得出来るようで出来ない内容なのだろう。 藤堂は事件の詳細も、沖田の苛立ちも何も知らない。何故、雛乃が藤森に保護されているのか。先刻の土方の話といい、浮かんでくる疑問に首を傾げるばかりだ。 藤堂から話を聞き、沖田の不機嫌さは増していく。思わず雛乃を連れ去っていった昨夜の光景が蘇り、沖田は眉間に皺を刻んだ。 「……話が違いますね。藤森は、雛乃ちゃんとの関わりを公にしないのではなかったのですか」 冷静を装いながら、状況を読もうとする沖田に原田は大きく首を横に振る。 「あいつら、雛乃の事口外するつもりでいるようだぜ。先刻、会津公の元にも文を届けたっつってたしよ。……もしかしたらよ、既に政の関係者には知れ渡ってんじゃねぇか?」
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