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そう。藤森は、芹沢暗殺が誰の主導で行われたのか全て把握している。最大の弱点を握られていると言っていい。
藤森に逆らえば、間違いなく壬生浪士組は終わりを迎える。
「……藤森に楯突けば会津公の立場も危うくなり、浪士組に対する信頼も落ちる。組織を存続させたいのならば、提案に従うしか道はないだろう」
「そんな……!!」
「おいおい、雛乃とやっぱり会えなくなるのかよ?」
淡々と語られる斎藤の言葉に、藤堂と原田は悲痛な声を上げる。
二人の反応は当然だった。上の命令だから、と雛乃との別れをそう簡単に受け入れられる筈がない。
「……唯一、覆す事が出来るのは雛乃自身の意見だろうな。当事者である雛乃が、壬生に戻る意志があるのか否か。それが重要だと俺は思うが」
そう言って、斎藤は沖田を一瞥する。沖田は何やら考え込んでいるのか、地面と睨み合っていた。
先程の言葉は沖田に向けたものである。
雛乃は今回の芹沢の死に、酷い衝撃を受けたと思われる。過去に事件で家族を亡くした身だ。悲しみも計り知れない程に深い筈。
そんな雛乃が、大切な人であった芹沢を殺した壬生浪士組に、留まると思うだろうか。以前のように毎日、笑顔で過ごせるだろうか。
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