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かつて雛乃と交わした会話が蘇る。雛乃は真っ暗な闇に一人で佇んでいた。自分だけ生き残ってしまったと、何度も何度も自分を責め続けていた。
今の沖田と同じように、過去を悔やんでばかりいたような気がする。
前に進むべきなのだ。事実を認めながらも、信じて前に進むしかない。それで拒絶されたのなら、致し方ないだろう。何も見ていない現状で、結論付けるのは間違いなのだと気付いた。
「一君に諭されるなんて何だか複雑な気分です。そうですよね……。逃げていては、何も掴めませんよね」
「……俺は何もしてない。ただ、言いたい事を言っただけだ」
目的を見つけた沖田は、先程のような殺気を滲ませてはいない。そんな沖田を一瞥すると、斎藤は目を優しく細めた。
「……これから、どうするつもりだ?」
「決まってるじゃないですか。訪ねてきた藤森の来客から話を聞く事にします。話の通じない相手ではないと思いますし」
雛乃と会って話をしたい。それが沖田の、今一番の望みだ。それを叶える為にも、先ずは雛乃の現状を知る必要がある。
「……事を荒立てるなよ」
「わかってますよ。それなりに自重はします」
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