間章:雨上がりの空

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相手は京の裏を統べるとも言われている藤森家。拒否すればどうなるかぐらい、重々承知だ。だが、素直に頷く事はどうしても出来なかった。 「理解はした。だが、昨日の今日で決断しろと言われても困る」 言い淀む近藤に代わり、土方はそう口にすると下座に座る密樹を見据えた。 明日には芹沢らの葬儀を控えている。葬儀が終わっても慌ただしい日が続くだろう。幹部数名が亡くなり、隊内は既に乱れ始めている。直ぐ様、編成に一つに纏め上げなければ更なる混乱を招くに違いない。 その要因となり得るのが雛乃の身分でもあった。 「平隊士はあいつの出自を何も知らねぇ。アンタが来た事によって、隊内に動揺が広がるのは必至だ。先の事より、今の現状をどうにかしてもらいてぇとこなんだがな」 遠回しだが、提案を受け付けないとの意志を見せた土方に密樹は微かに眉を寄せる。そして、困ったように頭を掻いた。 「……若さんの言うてた通り、厄介な副長はんやなぁ」 拒否を示した訳ではない。今の現状を見て、行動してほしいと言われただけだ。 確かに、葬儀前に尋ねてくるのは無粋だったろう。土方の主張は最もである。しかし、藤森としてはどうしても先手を打っておかねばならなかった。
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