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密樹は細めていた目を微かに開け、土方と近藤を交互に見つめる。
対照的な二人だと思う。近藤は朗らかで包容力のある人物だというのに、土方は深く刻まれた眉間の皺といい、その不機嫌な表情といい近寄り難い印象を与える。
流石は次代の鬼と噂された事だけはある。芹沢を失った今なら、簡単に勝ち取れると思っていたのが大きな間違いだった。
自らの過ちを認めるかのような深い息を吐くと、密樹は再び口を開いた。
「まぁ、ええわ。若さんからある程度の自由はもろてるさかい、七日間の猶予与えます。七日後、また尋ねてきますわ」
「えっ!?」
まさか、そう簡単に受け入れてもらえるとは思っていなかったようで、近藤は驚きの声を上げる。土方も意外だと言わんばかりに密樹を見つめていた。
「そ、そないに驚かれます? 世間で噂されるように、藤森(ウチ)は血も涙もない鬼ばかりやあらへんで。強硬手段もあるけどな、それなりに融通もちゃーんと利くんです!」
二対の視線を受け、身を引きながら密樹はそう断言すると、懐をごそごそとまさぐり始める。暫くして取り出したのは皺が刻まれた一通の文だった。
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