11421人が本棚に入れています
本棚に追加
「一応、これも渡しておきますわ。姫さん……雛乃様から託された文です。書いたんは姫さんやなくて、別の者ですけど」
密樹から差し出された文を近藤は受け取り、土方に渡した。皺まみれの文には短く“私室の押し入れの右奥”とそれだけ記されている。
一体、これは何を意味しているのか。一見、ただの文章にしか見えない。だが、含まれている意味は大きいように思える。土方は文を隈無く見た後、密樹に再び目線を移した。
「文はこれだけか?」
「へぇ。受け取ったのはそれだけです。まだ本調子やないようで、直ぐに眠りにつかはったと聞いてますわ。せやから、文の詳細なんは副長はん方で考えてもらわんと……」
頭をカリカリと掻いて、密樹は苦笑を浮かべる。困ったような表情を見せてはいるが、動揺は感じ取れない。
もしかして、藤森はこの文の意味を把握しているのではないだろうか。故に、阻止する事も無く雛乃の文を此方へと渡した。
雛乃の直筆でない事、皺くちゃに酷く歪んだ文が疑惑を増長させる。
「……この詳細が分かっても藤森に報告はしねぇぞ? それでも良いのか?」
最初のコメントを投稿しよう!