間章:雨上がりの空

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「一応、これも渡しておきますわ。姫さん……雛乃様から託された文です。書いたんは姫さんやなくて、別の者ですけど」 密樹から差し出された文を近藤は受け取り、土方に渡した。皺まみれの文には短く“私室の押し入れの右奥”とそれだけ記されている。 一体、これは何を意味しているのか。一見、ただの文章にしか見えない。だが、含まれている意味は大きいように思える。土方は文を隈無く見た後、密樹に再び目線を移した。 「文はこれだけか?」 「へぇ。受け取ったのはそれだけです。まだ本調子やないようで、直ぐに眠りにつかはったと聞いてますわ。せやから、文の詳細なんは副長はん方で考えてもらわんと……」 頭をカリカリと掻いて、密樹は苦笑を浮かべる。困ったような表情を見せてはいるが、動揺は感じ取れない。 もしかして、藤森はこの文の意味を把握しているのではないだろうか。故に、阻止する事も無く雛乃の文を此方へと渡した。 雛乃の直筆でない事、皺くちゃに酷く歪んだ文が疑惑を増長させる。 「……この詳細が分かっても藤森に報告はしねぇぞ? それでも良いのか?」
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