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土方の問いに、密樹は肯定の意味を含んだ頷きを返した。頭を掻く仕草はまだ続けている。どうやら一種の癖らしい。
「姫さんは、まだ藤森が保護しとるだけの身ですから。必要以上は干渉せん事になっとるんです。まぁ、こんな小間使いぐらいはやりますけど」
文を取り出す際に着崩れた部分を戻し、密樹は笑みを溢す。
「あ、そや。其方さんが文を出すのも、今なら多分ええと思いますよ。若さんが――」
「それよりも、雛乃ちゃんと一度話をさせて頂きたいんですけど」
密樹の話を遮るように、勢い良く開け放たれた襖。其処には、無表情で佇む沖田の姿があった。
「総司!?」
「すみません、近藤さん。少し彼と話をさせて下さい」
そう言って、沖田は目の前に座る密樹を見据える。突然、乱入してきたにも関わらず密樹は全く動じていない。気配を消して佇んでいたのだが、早くから気配に気付いていたようだ。
「アンタが沖田はんでっか。話は若さんから、よう聞いてます。姫さんと仲良かったようで」
笑顔で自分を見上げてくる密樹に、沖田はにっこりと笑みを返した。だが、その瞳は笑っていない。
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