間章:雨上がりの空

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「雛乃ちゃんの兄代わりでもありましたからね。妹を守るのは兄として当然の事です。で? 雛乃ちゃんと話す事は出来るのですか? 出来ないのですか?」 口調は穏やかだというのに、その視線は鋭い。いつの間にやら二人の間には、バチバチと見えない火花が飛び散っていた。 沖田と密樹。この二人は互いを敵だと判断したらしい。 「兄代わり、ね。そう過保護やと、嫌われるんちゃうん? 適度な距離がええと思うで。藤森に安易に関わるもんやない。姫さんは、本来居るべき場所に戻るだけや」 「雛乃ちゃんを良く知りもしない、藤森の使用人に言われたくないですね。勝手に入り込んで来て、勝手に引き離そうとする。そちらに雛乃ちゃんがいる方が危険極まりないです」 沖田は雛乃の過去を全て知る訳ではない。だが、雛乃が藤森に行って穏やかに過ごせるとはどうしても思えなかった。 密樹は沖田を暫く見つめた後、小さく息を吐いた。 「……強情やなぁ。あの人以上に扱いにくい兄さんや。残念やけど私の一存で、決める事は出来ひん。どうしても言うんなら、若さんに頼んでみたらどうでっか?」
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