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強い口調。揺るがない自信。何度口論してもその主張だけは決して揺るがない。
雛乃にはそれだけの価値がある。それは沖田とて理解はしているが、だからと言って藤森に自由を奪う権利などあるのだろうか。
「雛乃ちゃんは、物ではありませんよ。本人の意志で選ばせたらどうですか」
「何や、ほんで姫さんが藤森(ウチ)を選んだらアンタは文句言わへんの?」
二人の話は会話になっているようで、会話になっていない。目を合わせれば睨み合う。沖田の苛立ちは限界に達しているようで、今にも刀を抜きそうな雰囲気だ。
土方は、それを打ち消すように畳を拳で叩く。身体に響く振動に、沖田と密樹の開いていた口は瞬時に閉じた。
ピリピリと伝わる土方の鋭い視線。どうやら、苛立っていたのは彼も同じらしい。近藤をちらりと一瞥し、土方は口を開いた。
「前言撤回だ。猶予与えられるんなら、雛乃と話をさせろ。そうアイツに、一琉に伝えておけ」
有無を言わせない口調に密樹は首を竦めると、肯定の意を示す。
「……分かりました。そう伝えておきますわ。せやけど――」
「何だ?」
「いやいや。何でもあらへん」
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