間章:雨上がりの空

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無事に壬生の前川邸を出る事が出来た密樹は、市中に広がる隠し通路を足早に歩いていた。 表を歩いていないのは、浪士組からの監察を寄せ付けない為。現に屯所を出る時に尾行されている気配があった。それを直ぐに察した密樹は、馴染みの店を潜りこの隠し通路へと逃げ込んだのだった。 さて。このまま藤森本家に戻るか、それとも忍の隠れ家に立ち寄るべきか。 脇道で鳴り響く虫達の羽音に耳を傾けながら、密樹が思案していた時だった。 「密樹」 名を呼ばれ、ビクンと密樹の身体が跳ねる。恐る恐る顔を上げると、そこには立ち塞がるように佇む一琉の姿があった。 きちんと整えられた着物を着用している事から、京都守護職本陣からの帰りだと思われる。 「わ、若さん。今、帰りでっか。お疲れ様です」 「おぅ。……なぁ、密樹。叔父貴の居場所知らねぇか? 昨日から行方知らずなんだが」 一琉の問いに密樹は表情を強張らせた。やはり、危惧した通りになってしまった。あれ程慎重に動いてほしい、と忠告していたのに彼は、置き手紙すら残さず、忽然と姿を消したらしい。
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