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言葉を掻き消す程に激しいくしゃみを再び吐き出し、勝國は豪快に笑った。
鼻から垂れる水は、止まる気配は無い。風邪の症状は既に表れているようだ。
「熱はあるんですか」
「そんなもんはなか。ただ寒かだけやけん、ぶっ!!!!」
熱は無いと言い張る勝國の意見を無視し、双葉は強引に彼の額に手を当てた。掌から伝わる熱は平熱のものではない。明らかに異常を表している。
双葉は深々と息を吐いた。
「勝國様」
「嫌じゃ」
プイッと顔を背け、勝國は双葉から距離を取る。暖を取っていた火鉢から離れ、直ぐに脱出出来るよう背後に窓際が来るようにした。
「寝込んでしまうぎ、何の為に長崎まで来たか分からんたい。長う待たせとる龍さんにも申し訳なか!」
「……途中でぶっ倒られて、大事な会合が白紙になる方が此方としては困るんですけどね」
勝國の主張に双葉は笑顔でそう指摘する。指摘を受け、勝國は思わず言葉を詰まらせた。
勝國は以前風邪を拗らせ、会合の場で倒れた事がある。生れ付き身体が弱い事もあり、無理をすれば悪化しやすかった。つまり、病を発症した際は早目に養生しなければならない。
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