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そう察した勝國は目の前にある薬包を奪い取り、その場から立ち上がった。
「薬なんぞ飲まんし、屋敷には行かんと決めとる! こんまま、龍さんと落ち合うて――」
「――無駄ですよ」
「うおぁ!!」
外へ逃げようと窓を開けた勝國に待っていたのは、双葉は配置していた忍による捕獲、だった。四方を囲まれ身動きが取れないばかりか、体格の良い長身の男に襟足を掴まれ部屋に投げ飛ばされてしまった。
「さて、勝國様。覚悟は宜しいですね?」
「いっ……」
起き上がった勝國が捉えた双葉の笑顔は、死刑宣告に来た死神のように見えた。
「嫌じゃぁあぁぁぁぁ!!!!」
忍達に引き摺られるようにして部屋を出て行った勝國を双葉は一人見送った。そして、部屋に散らばった荷物を拾い集める。
荷物と言っても大したものはない。勝國が脱ぎ散らかした着物と替えの着物、あとは風呂敷に包まれている旅一式の道具ぐらいだ。
着物を手にして、双葉はふと思う。勝國は下帯姿のまま連れ出されなかったか。布を被せ、担ぎ上げれば問題ないだろう。そう結論付け、着物を風呂敷に押し込んだ。
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