間章:夜の帳の中で

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「吉田の件は報告を待つとして、少女の方はどうしたら良いんだ? 手掛りぐらいはあるんだろ?」 調べてくれと頼まれたからにはやることはやるつもりだ。だが、ある程度の情報が必要不可欠ではある。 一琉の問いに久坂は外に視線を向けたまま、口を開いた。 「情報か……。容姿や関係性なら先刻話した通りだ。一つ、注意しておくとすれば、稔麿には十分気をつけて欲しい」 「吉田、に?」 「……あいつは、雛に関する事になると我を見失いがちになるからな。もし、見つけたとしても雛と二人きりにはなるな。――下手すれば、殺されるぞ」 物騒な久坂の言葉に一琉は思わず顔を引き攣らせる。 一琉は唾を飲み込んで、久坂をジッと見据えた。 「……ちょっと待て。吉田にとってその子は義妹だろ。何だ、溺愛してんのか?」 久坂は少し困ったような表情を浮かべ、緩く息を吐く。そして一琉の方へと振り返った。 「溺愛という言葉で済ませれる関係じゃない。稔麿にとって、雛は――……」 「唯一の許嫁でも、あるんだ」
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