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――よく晴れた昼下がり。
土方は束ねられた書類を片付けながら、煙管を蒸かしていた。白い煙が宙を舞う中、筆を緩やかに滑らせていく。
ふと、感じた気配に土方は筆を止め、それを硯に置いた。筆の代わりに煙管を手に持ち、フーッと息を吐き出す。
「――――入れ」
「失礼します」
声がしたと同時に、一人の青年が襖を開き部屋へと入って来る。一礼し、無駄のない動きで土方の背後へと腰掛けた。
青年の気配を感じ取りながら、土方は口を開く。
「何か、分かったか?」
「副長が案ずる様な事は、まだ何も。ですが、気になる点が少々」
青年の言葉に目を細め、土方は振り返った。眉間には微かに皺が寄り、何処か不機嫌そうに見える。
そんな土方を無表情のまま、青年は見つめていた。
「気になる点たぁ、どういう事だ。怪しい動きでもあったってのか」
「……話せば長くなりますが。それでも?」
「構わねぇ。洗い浚い、全て話せ」
土方は煙管を再び口にくわえ、目で青年を促す。息を吐き、青年は事の次第を話し始めた。
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