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「何処で、食べようかなぁ……」
竹の皮で包まれた何かを大事にそうに持ち、廊下を歩く雛乃の姿が其処にあった。
任せられた仕事を一段落させて台所へ向かった所、久から甘味を貰ったのだ。
この時代に来てから、初めての甘い物。嬉しさを隠せない。
角を曲がり中庭に面した所へ出ると、そこに腰を下ろした。
誰も居ないこと確認し包みを開ける。中には、みたらし団子が数本入っていた。
頬を緩め、それに手を伸ばす。ゴクリと唾を飲み込み、団子を口へと運んだ。
「んぅ!!」
団子を持っていない方の手を振りながら、キュッと目を閉じる。
歓喜の声を身体で表しつつ、口をもごもごと動かして団子を味わっていた。
「おいひい……」
そう呟いて、雛乃は再び頬を緩める。ふにゃりと歪んだ顔は何処か可愛いらしくもあり、傍に誰かいれば確実に抱き締めていただろう。
何だかこの一週間の苦労が全て洗い流されるような、そんな気がする。
たった一週間。されど一週間。
全てを打ち明けたあの日から雛乃は、目まぐるしい毎日を過ごしていた。
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