それぞれの行く路

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土方は何故その事を知っているのか、と言いたそうだった。 理由は簡単なものである。句を把握しているという事は、雛乃が先の時代から来た事を意味し、尚且つ土方の句集が好きな事を示していた。 土方の句に興味がなければ、絶対に知る筈の知識。沖田にからかわれるのは可哀想だが、今は覚えていて良かったと心から思えた。 そんな事を考えていると、沖田が何か含んだ笑みを浮かべ、土方さんの耳元に囁いていた。 それを聞くなり、土方さんは青ざめる。沖田さんは満面の笑顔で私に向き直り、こう言い放った。 『土方さんから了承もらいましたから、大丈夫です!』 あれはどう見ても、許可したようには見えなかった。 沖田の一方的な脅しによって、土方が何も言い返せず時が流れたって感じに違いない。……多分。 その後、正気を取り戻した土方と近藤と話し合い、此処に住まわせて貰う代わりに、女中をやる事になったのである。 久も雛乃が加わる事をかなり喜んでくれたようで、嬉しかった。 (……そういえば、年齢を言ったら近藤さん達、固まってたよね……) やっぱり、年相応には見える事は無いらしい。 そこだけは、ちょっと悲しかった。
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