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男性がハッとして目線を下へ向けると、大きな瞳で自分を見る幼女がいた。
「……ぁ……」
何かを話そうとして、口を動かすのだが声にならないのだろう。何度も、むせかえす幼女を見て、男性は幼女の口元に人差し指を当てた。
「無理して喋ってはいけません。体力を削るだけですよ」
幼女は息を乱しながら男性を見る。その表情は驚きに満ちていた。
何処か怯えたような幼女を見て、男性は安心させるよう、穏やかに微笑む。
「大丈夫です。私は怪しい者ではありません。そのように身体を強張らせないで下さい」
ゆるゆると幼女の頭を優しく撫でる。それに幼女は次第に力を抜いていった。
心地良い手触りに、幼女は目を閉じる。
暫くして、静まり返った室内にギシギシと床の軋む音が響く。
「先生、布団持ってきました!」
青年はそう言って、戸口に近い座敷に布団を素早く引いていく。
青年の声に気を取られて、男性は顔を上げていたが、再び幼女を見ると幼女は気を失っていた。
青年は幼女の頭を緩く撫でて立ち上がる。
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