青天の霹靂〈前編〉

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「うわぁ、今日は凄く良い天気だなぁ……。これなら、これだけの量でも直ぐに乾きそう」 穏やかな風と、燦々と降り注ぐ太陽の光。雛乃は腰に手を当てて息を吐き、物干し竿へと干した大量の洗濯物を見つめた。 以前は何度も転倒し、洗った着物や袴を地面に落とし駄目にしていたが、今ではその心配は全くない。雛乃一人で、全ての洗濯物を片付けられるまでに成長していた。 染みや汚れが無いか最終確認を終えると、空になった盥(タライ)を指定の場所へと戻す。そして、雛乃は久の待つ土間へと足を向けた。 時の流れとは早いもので、八月も数日が過ぎようとしている。季節は秋に近付きつつあり、朝方と夕方はほんのりと風が冷たく、とても心地が良い。 長く伸ばした髪を風に遊ばせながら、雛乃は緩く首を傾けた。 (……そういえば、八月ってなんか色々あったような気がする。何があったかなぁ……) 土間へと歩みを進めながら、雛乃は思考の波へと意識を落としていく。
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