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沖田が考えた表現の仕方に大いに不満はあるが、確かに彼――栄太郎は確かに怪しい人物だと思う。
出自不明で、藤森に近しく雛乃の許嫁という事しか判明していない。沖田同様に気になったのは彼の殺気だ。
藤森の者であれば、あのような殺気は軽く出せるだろう。だが、彼のは何かが引っ掛かる。根拠はない、土方が持つ勘がそう告げていた。
しかし、一琉に釘を刺された以上安易な詮索は出来ない。証拠を突き付けなければ藤森は首を縦に振らないだろう。
「……不満は分かる。俺も腹立たしくて仕方ねぇからな。明らかに情報が少な過ぎんだ。そう簡単に結論出せる問題じゃねぇ」
よくよく考えてみれば、雛乃に関して土方達は知らない事が多い。雛乃とよく一緒にいた沖田でさえ、雛乃に許嫁がいると事実を知らなかった。
「一先ず、今日は引き上げんぞ。山崎に調べて貰う事が山程出来たしな」
踵を返す土方に、藤堂と沖田はゆっくりとした動きで腰を上げる。
沖田は、土方の指示に不満を見せていたが、決して拒否する事はしなかった。
――――翌日、十日。某時刻。
佐伯又三郎は島原にて斬殺死体となって発見される。下手人は誰か不明のまま、処理されたという。
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