局中法度

2/58
11413人が本棚に入れています
本棚に追加
/1099ページ
一、士道ニ背キ間敷事。 一、局ヲ脱スルヲ不許。 一、勝手ニ金策致不可。 一、勝手ニ訴訟取扱不可。 一、私ノ闘争ヲ不許。 上条々相背候者切腹申付クベク候也。 「……局中法度?」 「はい。土方さんが取り決めた隊規ですよ。切腹、だなんて物騒なもの書いたから、もう皆震え上がってしまって」 情けないですよねぇ、と笑う沖田の横で雛乃は表情を曇らせた。それに気付いた藤堂は手を横に振りながら口を開く。 「あ、でも総司のように皆が皆、納得してる訳じゃないよ? 幹部の間でも動揺はそれなりにあるし……。違反したら問答無用で切腹。戸惑うのが当然の反応。だよね、新八っつあん」 「ああ、まあな。それなりに人数増えたし、隊規は必要だとは思ってたが、まさかこんな“鉄の掟”とはな。土方さんらしいっちゃ、土方さんらしいんだけどよ……」 団子を啄みながら永倉はそう言うと、乾いた息を吐き出した。 この日、非番だった三人は近況報告も兼ねて雛乃の見舞いに藤森邸を訪れていた。
/1099ページ

最初のコメントを投稿しよう!