舞台はユクモへ……

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彼らはハンターである。 自然界が産み出した人としての身体能力を限りなく引き延ばし、どんな炎にも爆発にも、狂気の牙をも受け耐えられるほどに鍛え上げられた。 自然界の住人であるモンスターを狩り、彼らの身体の一部を牙に鎧にし、人々を守る戦士。 時に野原を、砂原を、沼地を、火山を、凍土を駆ける英雄。 それが彼らが彼らである理由である。 「で、ユクモ村にはいつ着くのかねぇ」 今だにガタゴトと揺れる荷台にて、グラニは嘯く。 今、彼らが進むルートはいわば脇道である。ユクモ村へ向かうルートの途中にて凶悪なモンスターが出現したとの事で、少し遠回りにはなるが安全なルートを選択した訳である。 そのおかげで早朝の6時から出発する事になり、今起きているのはグラニだけだ。 先ほどまで会話をしていた変態すらも眠り、グラニはただただため息を漏らす。 こんなのが、かつてのギルド最強の一角だからなぁ。 かつての雪国、ポッケ村。グラニが彼らと出会ったのはそこであるが、それ以前からハンターだった彼らの実力はグラニでは足元にも及ばない。 まずモンスターと出くわしたら出方を伺う物なのだが、2人は真っ先に武器を取り出し襲いかかる。そして頭を叩き、羽根を潰し、皮膚を抉じ開け、内臓をすり潰し、体内にある稀少価値の高い紅玉を取り出すと「ウェーッハッハァ!!」と高笑いするのだ。 もはやモンスターに同情すら覚えてしまう程の行動に、ついた忌み名が「ポッケデーモン」。 出来ればユクモデーモンなどという忌み名はつかないでほしいものである。 そしてつくづく思うのは、彼の変身である。 鈍器、ハンマーを主な武器として戦うハンター:紅。前の名前は紫呉であるが、 性別は男である。 最強ハンターが抜けるとの事で武器や防具は後輩ハンター達のために置いておく事になり、さらには自宅の整理整頓をしていたら。 「ドキドキノコ食ったらこうなった」 いやそんなキリッと言われても、という事で性転換したわけだ。 確かにドキドキノコは何が起こるかわからないアイテムだが、まさか性転換するとは。 「自然界、恐るべし」 うーむ、と唸ってこの自然界の凄まじさを痛感していると、ポツポツという音が耳を打った。 雨か、と思い外を見ようとした瞬間、
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