猪突猛進

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真っ直ぐ放たれた片手剣は少女の頭上をスレスレの軌道を行き、突進してくる影に突き刺さる。 血が吹き出し、それは突進の勢いで滑走し、少女の寸前にて倒れた。 ファンゴ。単体ではそれほど危険度は高くないが、複数出現する上に突進が厄介なモンスターである。 「ごめん。声よりこっちの方が早かったから……」 「……………!」 いきなし片手剣が飛んで来たからか、少女は驚愕のあまり尻餅をつく。 震えながら背後を顧みて、少女はさらに驚きの声を上げる。 グラニは素材剥ぎ取り用のナイフを取り出し、ファンゴの肉を取り出す。 「怪我はないか?」 「う、うん………ハンター様?」 片手剣を抜き納刀しながら心配するグラニに頷き、少女は首を傾げる。 「あぁ、ユクモ村に行く途中だったんだけどね………えっと、君はハンターじゃないよね? どうしてここに?」 当然の事ながら、この場所はハンターを除いて行商人程度しか利用しないはずだ。こんな少女が来るべき場所ではない。 「…………お、お母さんが病気で……薬草を………」 なるほど、とグラニは納得する。見れば少女の手には薬草があり、彼は少女の頭を撫でる。 「偉いな。なら、早く帰ってお母さんを喜ばしてあげよう」 「………うん」 ともかく、目標は達成された。 後はクロノと紅を呼び戻すだけだ。 懐から赤い円柱の物を取り出すと、先端部を擦る。瞬間、火花が散って赤い煙が吐き出され、それは勢い良く天へ上り弾ける。 「………何あれ?」 「サイン。何かあったらあれを使って仲間に知らせるのさ」 雨の中だろうと、古代人の技術を解析して作られた物だ。関係なくその効果を発揮する。 さすがのクロノでも、あのサインを目にすれば駆け付けてくるだろう。 「君はユクモの人?」 「う、うん……」 くしゅん、と少女がくしゃみをする。 季節的には暖かい地方だが、やはり雨に打たれるには少女は幼すぎるのだろう。 かといって、グラニの服は地肌に上から被っているに過ぎない。かくてあげられる物がなかった。 「………ひとまず先にベースキャンプに戻るか」 ベースキャンプに行けば、日用品くらいある。寒さも防げるはずだ。 その時。 「どどどどどどぉーっ!」 奇声を上げながら駆けてくる馬鹿が1人。 「砥石がぬぇーっ!」
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