猪突猛進

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クロノが1人、駆けてきていた。その様子からサインを見たという訳ではなく、後ろの影から逃げているようだった。 「さすがのクロノも砥石なしじゃ無理か……ってぇぇーっ!?」 グラニが仰天したのは、その後ろの影。ファンゴよりも巨大な体躯に強大な牙。 ドスファンゴ。ファンゴの親玉であり、その突進の威力は比べ物にならないくらいに強力である。 「木陰に隠れてろ!」 少女を叱責し、彼女がびくりと震えるのもお構い無しに、グラニは地を蹴る。 飛び掛かると同時に片手剣を抜き振りかぶり、一撃をぶち込む。 不意討ちに近い攻撃にドスファンゴは止まり、その頭を揺らして牙をグラニへと叩きつける。それを盾で防ぎ、クロノへ叫んだ。 「少女は見つけた。ずらかるぞ!」 「馬鹿言え! ドスファンゴごときに逃げてたまるか!」 そのドスファンゴごときに背を向けていたのは誰だよ、とは言わない。 グラニは地面を滑って敵を睨み、間合いを取る。 そして再三飛び掛かり、 「げっ………」 牙と激突した瞬間、片手剣の刃が砕け散ってしまう。 「くそったれ! あのじじいなまくら渡しやがって………!」 毒づきながら丸腰になったグラニはドスファンゴの突進を回避する。 しかし、ドスファンゴはぐるりと回り、必要以上に追いかけてくる。 「くっそ……クロノ!」 「なろっ……」 クロノの大剣が振るわれ、ドスファンゴの牙を弾く。だが、弾いただけではダメージは与えられず、倒す事は出来ない。 弾かれて地面を転がるクロノと、緊急回避で飛び込むグラニ。 その時、木陰に隠れていた少女が走り出し、先ほどまでいた林に飛び込む。 そして。 「使って!」 少女の小さな身体の何処にそんな力が秘められていたのか、その身を越えている物を投げ付ける。 それは地面にざくっと突き立ち、グラニはそれに目を見張る。 「そんな物をどうして!?」 驚きつつもそれに飛び付き、グラニは背中に背負うと。 「ウェイっ!」 抜刀。 横薙ぎされた一閃はドスファンゴを切り裂き、ドスファンゴは思わず突進を中断してもがく。 「っ、太刀か!」 グラニが振るった得物を見て、すかさずクロノが声を上げる。 大剣よりも軽く細く、片手剣よりも重く長い。中間点に位置する武器、それが太刀だ。
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