第一話

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(4)  食事の間もロイはリザの様子が気になって仕方なかった。アルコールが入った所為か、リザはますます積極的にロイに絡んでくるのだ。  身体を密着させてくるだけではない。くすくすとよく笑うし、リザの方からロイにちょっかいを出してくる。普段なら、こういう態度を取るのはロイの方だ。自分がしていることをされるというのは何とも複雑な気分である。 「…やっぱり今日は変ですよ?」 ロイの腕をぎゅっと抱き締めた状態で、リザは心配そうにロイに問い掛けた。 「…変なのは君の方だぞ、リザ」  ロイはリザの腕を解くと、真剣な眼差しで彼女を見据えた。潤んだ瞳や火照った頬が普段よりもリザを幼く見せていて、その様にまた心臓が跳ねた。 「何かあったのか?今日の…いや、この間からプライベートの君は少し変だぞ」  積極的なリザも嫌いではない(むしろ大好きだ)が、こうもあからさまにグイグイ攻められ続けると、普段とのギャップが大きすぎて逆に戸惑ってしまう。何か心境に変化でもあったのかと気になってしまうのだ。  クールでなかなか素直になれない、意地っ張りなリザの性格を熟知しているロイにとって、リザの言動の変化はどこか無理をしているように感じられてならなかった。 「変…ですか?」  ロイに指摘された途端、リザの表情が曇った。眉を寄せて悲しそうな表情を浮かべ、俯いてしまう。 「ああ、いや、そうではない!変ではなくて、その……」  またしても一転したリザの態度に、ロイは慌ててフォローを入れようと試みた。 「変ではない、変ではないんだ!…ただ、君は積極的になるのが苦手な筈だろう?それが急に積極的になるから…何かあったんじゃないかって心配なんだよ」  なるべくリザを責める口調にならないように気を付けながら、ロイは諭すようにリザに問い掛けた。 「私はどんなリザでも好きだよ。もしも何か無理をしているのなら、そんな無理なんてしなくて良い。……何か、あったのか?」
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