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(6)
「無理しなくて良いんだ」
恋愛に関して不器用なリザなりに何か頑張ろうとしていたようだが、自分との恋愛をこんな風に思い詰めて考えて欲しくない――ロイはそう思っていた。
「……だって、男の人は受け身な女性を重荷に感じるって…」
「レベッカの恋人がそう言ったのか?」
ロイの問い掛けにリザは小さく頷く。
「そういうことだったのか…」
ようやく話が見えてきた。想像通り、レベッカの恋人の軽はずみな一言がリザのコンプレックスをぐさりと突いてしまったようだ。
「…私は素直じゃありませんから、ロイの負担になってるのかと思って……」
「嫌われるかもって、恐かった?」
こくりとリザは頷く。その姿を見たロイは、自分に嫌われまいと必死になるリザを愛しく感じつつも、彼女には恋愛や男心のイロハを、もっと徹底的に教え込む必要があると実感していた。
「なあリザ、『素直じゃない女は扱いが面倒臭い』なんてのは、レベッカの恋人の意見だろう?」
少しずつ落ち着きを取り戻してきたリザが理解出来るよう、ゆっくりとロイは言葉を紡ぐ。
「私はそうは思わない。そのままのリザが好きだから、私はこうして君と付き合っているんだ」
あまのじゃくな所も、なかなか素直になれない所も、恋愛に初な所も。端から見たら、扱いにくい面倒な女はに見えるかもしれない。しかしロイは、そんなリザを愛していた。
リザの中に、ロイのことを愛する気持ちや素直に甘えたいのにそうすることが出来ずに葛藤する気持ちがあることを、ロイは知っていた。表面に出てくる言動の裏には、リザのロイに対する深い愛情があることを、ロイ自身は気付いていたのだ。
「私たちは私たちのやり方で付き合っていけば良いんだ。周りなんて気にする必要はないんだぞ?」
周りに流されて左右される恋愛は疲れるだけだ。そうロイは考えている。不器用でも下手くそでも、互いに相手のことを思いやりながら愛情を育んでいくことが本当の恋愛だと、リザとの恋愛で気が付いた。
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