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(7)
「不安なら何度でも言うよ、リザ。私は君を愛してる」
ぎゅっと一際強くリザを抱きしめ、ロイは涙の跡を拭うようにリザの頬にたくさんのキスをした。リザの不安が消えるよう、祈りながら…
「ロイ…」
キスを受けながら、リザが小さくロイの名を呼ぶ。
「ごめんなさい」
レベッカの恋人の一言に不安になって、ロイの自分への気持ちを疑ってしまった。嫌われたくないという一心に支配され、自分を見失っていた。リザはまず、そのことへの謝罪の言葉を述べた。
そして…
「ありがとうございます…」
そんな自分を見捨てることなく、支え、愛してくれていることへの感謝。慣れない恋愛につまずいたり戸惑ったりすることもあるが、ロイとなら乗り越えていける――ロイとなら頑張れる――リザは確かにそう感じた。
「それじゃあ、仕切り直しだ」
また一つ互いの絆が深まったことを感じてロイはにこりと笑い、つられてリザも微笑む。
「あなたには適いませんね」
「…リ、ザ?」
不意にリザの顔が近づいてきたかと思うと、次の瞬間、ロイの頬に何かが触れた。それがリザの唇だと理解した途端、驚きにロイの目は丸くなる。
「…それはこっちの台詞だよ、まったく」
意識して積極的にならなくとも、こうして無意識に素直な仕草をすることが出来るリザにロイは苦笑を浮かべた。計算された積極性よりも無意識な素直さの方がドキリとさせられる。
二人の関係において、今はまだロイがリザをリードすることが殆どだが、いずれリザに主導権を奪われる日が来るかもしれない。無理矢理にではなく自然とそうなれるなら、リザに振り回されるのも悪くはない…。グラスに注がれた酒を飲みながら、ロイはそんなことを考えるのだった。
Fin.
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