吸血鬼。

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確かに人間は『吸血鬼』と言う存在に、沢山の設定を勝手に作ってきたみたいだ。 事実、まだ太陽が沈んでいない時間から私は追いかけ回されていたし、ニンニクなんか当たり前に効かなかった。 十字架も、銀のナイフも(お食事用だけれど)全くと言って良い程効果はなくて。 「愚かで……下等な……」 空なんか飛べないらしい。 コウモリになる事も、オオカミになる事も、霧のように体を変化させる事も出来ない。 血を吸った人を僕にしたり、壁や天井を走る事も出来ない。 人間より少し力が強くて、人間より少し体力があって、そして……。 「……おろ、かな」 胸に突き刺さっているのは、杭でも何でもない。 台所から持ち出した普通の調理包丁だ。 それに彼は苦しみ、血を吐き、今死のうとしてる。 そう、不死も、作り話。
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