12人が本棚に入れています
本棚に追加
確かに人間は『吸血鬼』と言う存在に、沢山の設定を勝手に作ってきたみたいだ。
事実、まだ太陽が沈んでいない時間から私は追いかけ回されていたし、ニンニクなんか当たり前に効かなかった。
十字架も、銀のナイフも(お食事用だけれど)全くと言って良い程効果はなくて。
「愚かで……下等な……」
空なんか飛べないらしい。
コウモリになる事も、オオカミになる事も、霧のように体を変化させる事も出来ない。
血を吸った人を僕にしたり、壁や天井を走る事も出来ない。
人間より少し力が強くて、人間より少し体力があって、そして……。
「……おろ、かな」
胸に突き刺さっているのは、杭でも何でもない。
台所から持ち出した普通の調理包丁だ。
それに彼は苦しみ、血を吐き、今死のうとしてる。
そう、不死も、作り話。
最初のコメントを投稿しよう!