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この『BLUEMOON』はオフィス街の一角にある。
だから色々な職種の人が出入りする。今日も一流企業のピンバッジを付けた人や、あたしの会社のライバル会社の受付嬢もいた。
「相変らず化粧が濃い」
と独り言を言いながら家路を急いだ。
『BLUEMOON』からアパートまで歩いて十分の距離だ。だからいつも気にしないで歩いていた。
でも今日は何かが違う。後ろに気配を感じる。オフィス街なんだから後ろに人が歩いていてもおかしくない。
「(あぁ…これがストーカーってやつか。ここ丁度街灯ないし…走ろ)」
と走ろうとしたその時、横の路地へ引っ張られた。
「…っ!!」
口を塞がれ声を上げることが出来ず、しかも三人がかりで壁に押さえ付けられた。心臓が今までにないほど速い動きをして、思考がうまく働かない。
今何が起きているのかもわからない。
すると地に落ちていた鞄を漁っている音がした。
「(鞄…?なにも入っていないのに…)」
鞄の中を物色していた手が止まった。目当ての物がなかったのだろう。手には何も掴まれていなかった。
これで解放される。そう思ったのも束の間、鞄を漁っていた手がこちらへ伸びてきた。
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