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誰でも、裏の顔なんて一つは持っている。 決して表にならない裏の顔。 あたしだってそう。 学生時代は勉強もスポーツも人並みにこなしてきた。進学校に通っていたあたしは、テストの順位は毎回五本の指に入るところにいて、みんなからはすごいねとか、羨ましいとか言われたものだ。 笑顔を貼りつけてそんな事ないよ、なんて謙遜すれば大抵はすごいよとみんなが口々に言う。 そんなループ現象を起こす前に頑張れよ、と心の中で吐き捨てる。貼りつけた笑顔のお陰で裏が表になることは一度もなく卒業した。 両親や先生に散々大学へ行けと説得されたが、もう面倒くさいからいいと言って、家から近い専門学校へ通った。 早く社会へ出たかった。 社会に出れば人付き合いなんて上辺だけで出来るから。 プライベートに干渉されることもない。 だから楽。 仕事をこなして給料さえ貰えればいいといつも思っていた。
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