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守成とは、つまり既得の権益を守ることを中心とする考え方で、大国の二世などに多いのである。
最初から、大国の主として家督を継いだ者は、勢力拡大を目指すより、自分の代で衰退させないように出来上がったものを守ることに目がいきがちである。
織田信長は、進取の気鋭に充ちた人物であり、年齢も鹿介から10歳上の33歳と若く、他の大名とは比較にならないほどの行動力を有している。
「織田殿なら、準備さえ調えば上洛すると思います。」
鹿介は答えた。
「準備とは何であろうか?」
と光秀が重ねて問い掛ける。
鹿介は思案しつつ、
「甲斐国の武田殿の動向です。」
と答えた。
「なるほど、武田信玄公ですね。」
とすぐに光秀が言う。
光秀も同様に考えていたのだろう。
甲斐国、信濃国を中心に巨大な勢力を築き上げている武田信玄は、美濃国と隣接しているため、信長としても無視出来ない存在であると鹿介は考えている。
武田勢の精強無比と云われる騎馬隊と戦端を開いてしまえば、上洛どころではなくなってしまう。
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