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「はい、武田殿と安定した関係を築くことが出来れば、時を置かずに上洛するでしょう。」
と鹿介は答えた。
「ふむ。」
光秀は考え込む様子であったが、
「そうなれば、確かに他の大名のように逡巡しないであろう。」
と言い、そして、
「大した眼力です。」
と感心したように笑った。
光秀と対面した帰途に鹿介は、この話の中に、織田信長に対して常に感じ続けている他の大名との発想の違いについて、解き明かすためのきっかけがあると感じていた。
光秀の知恵は、俺より遥かに、織田信長という人物を透徹しているのかも知れない…
鹿介には、明智光秀という人物にも、多少、信長に相通ずる何かを感じていた。
未だはっきりとした形を取り得ないが、
兄上のおっしゃるように、思案を頭の上に舞わしておけば、何時か答えが舞い降りてこよう…
或は、今、軽々に思い定めたものでもあるまい、と考えるのであった。
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